表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

壮大な物語

私の名前はジョージ。

イングランド王国の航海士だ。

 

今、2度同じ場所への航海を終え、母国に向かっている。

 

何故、2度も同じ所に行ったのか。

 

理由は、初めての航海にある。

あの時は、南蛮貿易ポルトガル船に乗せてもらった。

 

エリザベス女王陛下の直々のお達しを受けたのだ。

 

—見聞を広めてきなさい。

そして、航海術を極めなさい。

さすれば、お前にナイトの称号を与えましょう。

 

当時、私は小さな漁村で漁師をしていた。

何故私に白羽の矢が立ったのかはわからない。

そして、平民にそんな称号を与える事など前例が無かった。

こんなチャンス滅多とない。

二つ返事で引き受けた。

 

そして、船は出航する。

希望峰を回って東に向かって行く航路だ。

 

途中、色々な経験をした。それはまた別の機会に話そう。

 

目的地まであと少しと言う所で、とてもとても大きな事件が起きた。

 

我々はひどい嵐に遭遇してしまったのだ。

 

船は大きく揺れ、軋み、最後には

 

「転覆」

 

してしまった。

 

私は、甲板に上がりマストにしがみついていたのだが、転覆の瞬間に荒れ狂う海に放り出された。

 

—もうだめだ。

 

もがきながら、航海先に立たずなんてシャレにもならないと思った。

 

そこから、どれくらいの時間が流れたのか。

 

何か、物音がする。

 

目を開けると、小屋の中に居た。

 

ここは何処なのだろう。

 

キョロキョロしていると、せわしなく動いている青年と目が合った。

彼は、私が気がついた事に喜んでくれている様だった。

 

私はどうにかこうにか、生き延びたようだ。

 

側には木箱が置かれている。

 

成程。

 

コイツにつかまって、私は助かったのだろう。

 

彼は色々言ってくるが、言葉は一つたりとも理解できない。

 

出来ないのは、姿も同じ。

 

彼は、前頭部から、頭頂部まで剃り込んでいて、残っている毛を結び、剃り込んでいる所に乗せている。

 

ただ、分かったのは彼が友好的な事。

あと、名前。

 

「ゴサク」

 

と言うらしい。

 

ゴサクも漁師だった。

 

暫く私はゴサクと一緒に漁をした。

言葉は通じなくとも友情めいたものを感じる様になっていった。

 

ある日、ゴサクは私がつかまっていた箱を指差した。

 

何が入っているのだろう。

 

—しらない

 

と私は言ったんだ。

 

そして、開けてもいいか?

と聞かれた気がした。

 

うーん。

私の一存で、交易品を開けても良いものか。国際問題に発展しやしないか。

 

そうだ。

身振り手振りで、いいよ。

と、やりながら、

 

—わからない

 

と言っておこう。

言葉は玉虫色なので、如何様にもとれよう。

 

中身は何か、紫色の農作物だった。

 

へえ。

 

ポルトガル人はこんなのを食べてるのか。

もしくは途中で手に入れたのか。

 

そこから数日後、漁をしている時、貿易船が偶然そばを通った。

 

声の限り叫び服を振る。

 

よし、気がついた。

 

ゴサクと別れの挨拶もそこそこに、私は船に乗り込んだ。

 

船員に聞いたら、あそこはニッポンと言う国だった。

 

場所は種子島

 

不思議な髪型と服の国だったな。

 

そして、帰国し、女王陛下に報告。

 

すると陛下は、

 

—ナイトジョージよ。

儀を重んじ、イングランド王国代表として、ニッポンに行き、お礼をして参れ。

 

まあ、私も感謝していたから丁度いい。

今度は転覆しない様に。

そして、もう一度ニッポンへ。

 

無事その島に到着。

今度は通訳を伴っている。

しっかり礼を言おう。

 

暫く来ないうちに港はすっかり整備されていた。

 

接岸し船を降りると、向こうから身なりを整えた青年がやってきた。

 

—ゴサクだ。

 

立派になって。

そして、家に招かれた。

 

こんなに立派な家に住む様になったのか。

 

—あなたのお陰ですよ。

 

と言って、紫色の農作物を差し出した。

 

—この芋。ジョージがくれたこれを植えて増やして売ったのです。

あなたが言ってくれた名前は残念ながら島津家では変えられてしまいましたが、

こちらではその名で通ってます。

 

—?。私がこの作物の名前を?

 

—はい。ですから、これは

 

安納芋。

 

です。

 

—unknown?

 

—はい。ですから、安納。ここの地名も安納にさせていただきました。

ジョージ様。ありがとうございました。

 

そこから、安納芋のフルコースを振る舞ってくれた。

 

ねっとり濃厚で甘い芋。

美味さは本当に、

 

—unknown.だ。

 

—ヒョウ、ショウ、ジョウ。アン、タハ、エライッ。

 

しっかりゴサクに礼を言い、そして島を後にした。

 

私の軽率な一言が品種の名前にまで発展してようとは。

 

この事は、この日記だけの話にする。

 

今少し波が荒い。

 

日記はここまでにして、無事国に帰れるように努力しよう。

 

今日現在まで、この手記は発見されていない。彼は無事故郷へ帰られたのか。それすらもわからない。

 

民明書房館「お芋若きも」より抜粋。

 

安納芋、安納の語源は英語の

unknown「アンノウン」

だった説。

 

ワンチャンあるんじゃね。

と、干しアンノウン芋をこたつで食べながらふと思った。