表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

狼少年

—またか。

 

私は、ショートメールを眺め呟いた。

 

—お客さまのクレジットカードにおいて、第三者による不正利用の可能性を検知したためカードのご利用をお止めしております。

 

その下には、URL。アルファベットの羅列の中、ご丁寧に私が使っている信販会社の文字も見受けられた。

 

新手、いや何処にでもあるフィッシング詐欺だろう。

 

まあ、引っかからないからどうでもいい。

なんて、思いながら数日後。

 

某フライドチキン屋さんでお会計。

最近は、セルフレジになっとるんだね。

なんて言いながらクレジットカードを挿入。

 

暫くすると、

 

「使えない」

 

の文字。

あれ。おかしいな。通信エラーかな。

 

もう一度挿入するも、同じ文言。

 

ひょっとして。

 

違うカードで支払っている間、私の頭の中をどす黒い何かが渦巻いていた。

一目散で家に帰り、カード使用履歴を確認する。

 

なんだこれ。

 

有名ピザ屋さんの名前と、

 

2331円

3311円

3416円

4279円

 

計4回。13337円のご注文があった。

 

そしてこのピザ屋さん、残念ながら家の近所には存在しないし、我が家にピザが届いてもいない。

 

やられたのか。

 

後日、カスタマーサポートへ電話し、話を聞いた。

 

—去年の暮れ頃、海外の会員になるのにこのクレジットが使用されています。お心当たりは。

 

—ありません。

 

—その頃に何か、カードを使う際に引っ掛かる事はありませんでしたか。

 

—そう言えば。

 

某夢の国への入場券。

 

故あって、旅行会社からでは無くネット購入した。

一日目はすんなり買えたのだが、二日目のチケット購入の際、不正を疑われカードが使えなくなった。

何とか使えるようにしようと、色々やった時、セキュリティレベルを下げるのなんのかんののページに飛んだ。

少しの間、レベルを下げる事でカードが使えるかも。

そんな文言だったような。

素直に応じ、購入を試みたのだが、結局買えずじまい。

最終、妻のカード使用で事なきを得た。

そんな思い出。

 

—その時に盗まれたのかな。

 

—そうかも知れませんね。

とりあえず、この購入履歴はお客様のものでは無いと言う事ですので、消させて頂きます。それと、このカード番号は使えなくさせて頂きます。

後日、また新しいカードを送付いたしますので、宜しくお願い致します。

 

—はい。…っちょっとまってください。

新しいカードと言うと、番号が変わるんですよね。定期的にカード引き落としをしているサービスは、自動的に変更…

 

—されません。

 

—されませんか。

 

—なのでお客様で引き落としカード番号の変更をお願い致します。

 

—おお。おお。

 

面倒くさい。非常に。

あれもこれも、変えなければいけない。

おっと。

 

—その新しいカードはいつ届きますでしょうか。

 

—10日前後を見ていただければ。

 

おお。おおお。10日。その間引き落としが有れば、滞納と言うことになるじゃあないか。

そんな事を考えていると、私の奥よりふつふつ怒りの感情が湧き上がった。

 

ええい、にっくき、

 

ピザ好きめ。

 

—分かりました。

所で、不正利用した方の情報などはございますでしょうか。

 

—それが、私共の情報も、お客様にお渡ししている履歴しか送られてきておりませんので。分かりかねます。

 

そんな訳ある?

 

—それでは、そのピザ屋さんに聞かないと分からないんですね。

 

—はい。

 

—とりあえず、私が購入していないと認めて頂けて良かったです。それでは。

 

と、電話を切った。

 

次はピザ屋さんに連絡して、ピザ野郎をとっちめてやる。

 

と、サイトに行きお客様サポートにメールをうっている途中、

 

もううのすっごく、

 

「馬鹿馬鹿しく」

 

なった。

 

脱力感が私を襲う。

そしてゆっくりと、サイトを閉じた。

 

うん。

 

結局、私はお金を損しないのだ。

とおっても面倒な手続きをいっぱいしなければならないだけだ。

 

良かった。でええ。やん。

 

その先の話は、私で無い誰かの役目だし。

そう考え、この話はお終い。

と、私は強引に幕を引いたのである。

 

嗚呼旨し

 

人のカードで

 

食べるピザ

 

オアトガヨロシクナイヨウデ

 

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