表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

悲喜劇

—あんなに笑ってたのに。ほんまは怖かったんやな。

 

タワーオブテラーに乗った後、妻からの一言。

 

怖すぎたら、

 

 笑うしかない。

 

皮肉にも、私の人生そのものだ。

 

中学時代、いじめられた経験がある。

 

笑顔、自信、信頼。失った物を挙げればキリがない。

 

その代わり、時を同じくして授かった能力があった。

 

それは、

 

「過敏性大腸炎

 

と言う病。

お医者様に診断してもらった訳では無い。

しかし、症状から類推するにそうに違いないと私は思っている。

 

緊張やストレスなどで、お腹が痛くなる人が居る。

 

それと同じ様ではあるが、直接的な

 

便意

 

として現れるこの病気。

 

しかも、皆様経験がおありだろうが、厄介な下痢パターンの症状で。

 

一度目より二度、三度目と回数を重ねるごとに強くなる。

 

こんな苦痛が、ところ構わず発症するのだ。

 

いじめられた時より、

 

「学校に行く」

 

こんな当たり前の事にすら怖くて緊張する様になっていた。

 

朝起きる。

 

朝食はもう食べられない。

 

そして、登校前に二度は必ずトイレに行く。

 

便意があろうとなかろうと関係なしに、だ。

 

「水様便」

 

この状態になるまでひたすらに息んだ。

日によって、そこまで辿り着けるかどうかは分からない。

着けたところで、学校ではどうなるのかも分からない。

 

便意

 

この言葉はどれだけ調子の良い日だろうと、頭の片隅に擦っても落ちない汚れの様にこびりついている。

 

—負けてたまるか。

 

何とか克服しようと、高校では演劇部に入った。

人前で演技が出来るのであれば、人に対して緊張しないで済むかも知れない。

 

この事も入部した理由の一つ。

 

しかし、改善は見受けられ無かった。

 

そして、強烈な思い出が出来る。

いつぞやの動物園。

 

一丁前にデートをしていた時。

 

猿山での出来事。

 

一匹のオス猿が、メス猿に近づいて行っている。

何かちょっかいを出している様に見えた。

その刹那、山の上からボス猿が落ちてきてオス猿を威嚇したのだ。

オス猿は糞尿を撒き散らしながら、奇声を発して逃げて行った。

 

怯えて漏らす。

 

ああ、

 

あれは私だ。

 

とざいとーざい。

 

クソの様な男がクソみたいな社会で、泥土の様なクソをする。

 

本人悲劇のヒロイン気取り。

見てる方はお笑い草。

 

男の面白ズッコケ話。

見ないと損だよ。

 

とざいとーざい。

 

 

人生はネタだ。

 

 

悲劇に出来ないのなら、喜劇にするしかない。

 

怖いのなら、笑い話に変えろ。

 

そうやって今まで生きてきた。

 

夢の国に居る今現在も、容赦なく便意が襲っている。

家で2回、空港で1回。アトラクションの列から外れ、トイレに駆け込む事2回。

 

—行くなら、マーメイドラグーンのトイレがオススメ。

広々していて、大便器も多いよ。

 

涙が出そうになりながら、ネタに落とし込み、自嘲する。

 

私がノスタルジーを欲すのは、それとは無縁だった時分だからだろう。

ただ笑い、ただ泣けた。

一人称で、素直に生きられたあの時代を。

 

 

今週のお題「卒業したいもの」