表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

慣用句

私は野球が好きだ。

ただ、残念なことに、見る専門。

 

私は球技が致命的に

 

ヘタクソなのだ。

 

運動神経が0だとは思わないが、球の気持ちがどうしても分からない。

迫ってくるボールに、ドキドキが止まらない。いつも、悪いイメージがそのまま結果として現れる。

 

なので、球技ができる人はすべからく尊敬している。

 

と言うわけで、今回はベースボールの話。

 

私の友人で、運動神経がずば抜けて良いのが居た。中学校の同級生。

 

初めて交わした会話が、

 

—逆立ち何秒できる?

 

だった。

 

その時既に私はメガネっ子で、見るからに運動音痴の姿をしていた。

こんな人間に、そんな高等なスキルが身についている訳がないだろうと思った記憶。

 

逆に、彼は逆立ちして、器用に歩く事ができた。

 

先生に、

 

—お前は見たイメージをそのまま体現できるな。

 

と言われていたのを覚えている。

 

そんな彼だが、偶然にも同じ高校に合格した。

 

私は勿論、演劇部に入る予定だった。

彼は、野球部に入ると言う。

 

小学校の頃、野球をやっていたが、中学校の野球部には所属しておらず、ブランクはある。

そんな事は百も承知と言わんばかりに、本人からは凄いヤル気を感じていた。

 

ある日から、彼は野球部特有の大きな黒いバックをぶら下げ電車に乗ってきた。

 

そして、とても短くなった頭髪。

 

どこから見ても高校球児だ。

本人は、仲間から頭の事で冷やかされ、照れくさがったり、ちょっと怒ったりしていた。

 

あの運動神経を駆使して、どの様な選手になるのだろうか。

生き生きしている彼の表情を見て、私もワクワクした。

 

それから、数日経った日の事。

電車に乗ると、彼が友人と乗車して来た。

 

—もう、勉強がしたくなった。

 

??

どう言う話だろう。

 

聞けば、野球部をもう辞めてしまったらしいのだ。

 

—背中が痛い。投げるたびに激痛が走る。硬球がこんなにも違うとは。

後、練習の時間が長すぎて、勉強する時間が取れない。

 

確かこんな理由だった。

辞めたのかあ。

残念だなあ。

 

等と、思っていると、

 

ふと、頭をよぎる言葉があった。

 

これが本当の

 

「三日坊主」

 

 

肩を落とし、落ち込み気味の彼の側で、不覚にも吹き出しそうになる私。

 

ああ、言いたい。周りにも言いたい。今言いたい。

 

走り続ける電車。

 

悪魔と天使が吊り革のあたりで争っている。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何味

高校演劇にも所謂

 

「大会」

 

があった。

地区大会から、県、地方、そして全国大会と、勝ち進んで?行くのだ。

 

結局、私が在籍していた間、地区大会すら突破できなかったが。

 

ただ、残念とか、悔しいとかは、感じた事が無かった。

何故なら、その時の皆がそうとは限らないが、少なくとも私自身は、演劇を「目的」としてではなく、

 

「手段」

 

と、捉えていたからだろう。

練習は頑張っていたつもりではあるが、結果に拘らず、皆と仲良く出来ればいい。

それくらいの意識。

 

そんな高校2年生時分。

 

普段は地区大会の上位2校が次の県大会に進む。その年は何があったか忘れたが、3番目の学校も県大会で舞台が踏めた。

 

我が演劇部がそれに選ばれたのだ。

 

発表は出来るが、ただそれだけ。

次の地方大会には絶対に出られない。

 

部の皆の感想は様々だったが、私は密かに喜んでいた。小躍りする程に。

 

県大会と言うからには、県中から演劇部が集まる。

 

という事はですよ、

 

—私の憧れている、美人双子姉妹に会える。

 

以前、何かの会合で見つけていた。

うちの男部員全員が色めき立つ程の存在感。

 

よし、この舞台。

気合い入れて行きます。

 

お芝居の内容は、バンドのお金を稼ぐ為、ハンバーガー屋さんでアルバイトすると言う話。

 

その中のバイト初日の1シーン。

 

社員さんに我々は一列に並ばされる。そして、笑顔を見てもらう。

 

スマイルはタダ。

 

あのオマージュだろう。

 

練習や地区大会では、カッコいいアイドルのブロマイドよろしくポーズを決めていた。

 

が、今回はあのお方々が見ておられるのだ。

 

爪痕だ。

爪痕を残さねばなるまい。

 

本番直前になり、仲間達に私は、

 

—あのシーンでワシは「やる」で。

 

と息巻いた。

やりたいのは、

 

「凄い、もの凄い、満面の」

 

笑顔。

 

全く何の捻りも無いのは、若さ故か。

 

暫くして緞帳が上がる。

本番が始まった。

 

無難に話が進んでいく。

 

そして問題のシーン。

 

—さ、皆並んで。笑顔の練習をしますよ。

 

よし、キタ。ここだ。

 

さあ、思いっきり笑うぞ。

 

と、張り切って前を見た。

すると、客席が薄ぼんやりと見えるのだ。

その中に、憧れの方の顔がこちらを見ているのがハッキリと分かってしまった。

 

緊張。いや、それどころでは無い。

 

私は、

 

「あがって」

 

しまった。

 

顔は紅潮し、筋肉はひきつり笑えない。

客席がザワついたのは今でも覚えている。

 

震えた顔で社員さんの方を見る。

そして、

 

—あなたが一番良いわね。

 

そんな訳なかろう。

セリフだから仕方がない。

言わざるを得ない。

 

そして仲間がこちらを見る。

 

—えー。これが?

 

それは良かった。

 

その後の事は、もう覚えていない。

 

終わった。何もかも。

醜態だ。やらかした。

穴があったら入りたい。

はいりはいりふれはいりほー。

訳が分からなかった。

 

意気消沈し、帰り支度をしていると、仲間が私に話しかけた。

 

—猫しり。あの方が褒める内容の感想書いてくれてたで。

 

—ウソだろ。

 

私は耳を疑った。

 

—「あの」演技が出来るのは、

 

「本物」

 

ですよ。だってよ。よかったな。

 

 

憧れの人。今、告白します。

あれは、

 

「ガチ」

 

でした。

 

これは、青春の

 

「何味」

 

の思い出になるのか。

 

今だに答えが出ていない。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誘致

新世界にてレトロゲームを楽しんでいると、お昼ご飯の時間をとうに過ぎてしまっていた。

さあ、どこにする?

 

実は私。もう既に決めていた。

都会にしか無い、ずっと憧れていたヤツだ。

 

無論うちの県には無い。

 

その名も、

バーガーキング

 

注文したのは、

f:id:necosiri7:20230218203826j:image

ダブルワッパーチーズ。

970円也。ちと値が張るが、次にいつ来られるか分からない。

煩悩の赴くまま指差した。

 

残念ながら、そこのお店には駐車場が無く、店内で食べるのは諦め持ち帰る事に。

 

さあ、どこで食べる?

大阪にきたら、

 

大阪城でしょう。

 

NHKの駐車場に車を停める。

大阪城公園にて、初ワッパー。

f:id:necosiri7:20230219142652j:image

袋から出して膝の上に置く。

f:id:necosiri7:20230219101044j:image

でかい。それ以上に、

 

重い。

 

ズシリと凄い存在感だ。

 

無芸大食の私でも、たじろいでしまった。

 

先日、ビックマックを値段が上がる前に購入。しかも、倍。

f:id:necosiri7:20230219102541j:image

ビックマックなんてペロリだよ」

と、嘯いた私。

 

ただ、その時は、禁断の荒技である、

f:id:necosiri7:20230219102718j:image

「追いレタス」

を使い、何とか完食にこぎつけた。

 

今回は、空手。しかも、調子に乗って、

f:id:necosiri7:20230219103240j:image

おーとーもーにポーテートー。

 

最近、腹の前に、

 

「胸」

 

が一杯になる経験が増えてきたと言うのに。

行けるのか。

 

開けてみる。

f:id:necosiri7:20230219104037j:image

やはり、デカい。

考えていても仕方が無い。

とりあえず一口。

 

 

ンマーイ!

 

スモーキーなパティに様々な野菜が口の中で踊る。

レタスは勿論、玉ねぎ、トマト。

 

そして、主張し過ぎないチーズがいいアクセントになる。

 

これなら。

 

黙々と食べ進める事10分。

 

見事完食。

 

アレだけ大きかったのに、不思議と胸も一杯にならない。

ちゃんと計算されたハンバーガーでした。

 

 

是非!我が県に。

 

来て欲しい…。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答え

 土曜日、在阪の友人を愛車で迎えに行き、ある場所に向かった。

 

目的は、

 

「答え合わせ」

 

とでも言うべきか。

 

ノスタルジーをテーマにブログを書く様になって早一年。

どうも私は、レトロゲームに強く郷愁を感じているみたいだ。

 

うろ覚えの記憶を使って作成した記事達を読み返していると、どうしても本物に会いたい感情が沸々と沸いてきた。

 

名前を調べ、画像を調べ、あのゲームが置いてある場所を探した。

 

そして、発見。

 

場所は、そこまで遠くない。

天王寺の「新世界」だ。

 

新世界。

 

最初に行ったのは確か就学前か。

祖父に手を引かれながら、

 

—俺の手を離すなよ。

 

いつも優しい祖父が、自分の事を「俺」

そして、命令口調。

 

かなり危険な場所であるのだろう。緊張感が伝わってきた。

 

行き交う人の中には見るからに怖い人も居た。

 

通天閣の展望台に登るエレベーターは、何故かラッカーシンナーの臭い。

 

街の印象は、

 

錆びた鉄。

 

一人では到底来られない場所だった。

 

それから40年。

町はすっかり様変わり。

明るい観光地となっている。

 

さて、話を戻そう。

地図を見ながら歩く事5分。

 

目立つ場所にそれはあった。

 

f:id:necosiri7:20230214211114j:image

レトロゲーセンザリガニ。

ここに、あれがあるのか。

はやる心のまま店内へ。

 

1階、アウトランアフターバーナーなどの体感ゲームが並べられている。

 

階段を登るにつれて、逆に深海へ潜って行く様な感覚。埃っぽい、昔のゲーセンだ。

そして、最上階に着いた。

 

あれ?無い。

そこかしこを探していると。

 

!!

 

f:id:necosiri7:20230214212158j:image

目的の物では無いのだが、この筐体を見た瞬間、視界がモノクロになった。

 

ダイエーの一階。ドムドムバーガーが、ガラス窓の向こうに見える駐輪場の軒先に、これが何台が並べられている。

残念ながら、ソフトは「いっき」ではなかった。「ソンソン」「アッポー」そして、

f:id:necosiri7:20230214212620j:image

ゼビウス」。

ルールがあんまり分かっていないのに、親にせびってやらせて貰ったなあ。

 

嗚呼、懐かしい。

 

ここには、アレは無い。

ただ、諦めるのはまだ早い。

 

実は「ザリガニ」には、スーパーの名を冠した、

 

「超ザリガニ」

 

が別店舗として存在しているのだ。

そこなら。

 

また、我々は歩き出した。やはり、祝日。行動制限のない今、かなりの人混みだ。その波を掻き分け押し退け歩く事10分。

階段を登った先にそれは居た。

f:id:necosiri7:20230214213527j:image

ミニドライブ。

これ、これなのだ。

私の郷愁が溢れ出す。

以前の記事に書いてあるので、端折るが、

f:id:necosiri7:20230214213940j:image

こんな絵を想像のみで描いたくらい好きなのだ。

 

やっと出会えた。

 

40年ぶりにプレイ出来る。

さあ、お金を入れようと財布を取り出したのだが、何か違和感を感じた。

 

電源が入っていない。

 

よく見ると。

f:id:necosiri7:20230214213514j:image

下に、養生テープが落ちている。

コイン投入口に貼っていたのか。

 

ハンドルを回しても、タイヤが連動しない。

 

…故障中だった。

 

残念だ。

 

いや、残念というより、感謝の感情の方が優っていた。

 

調べると、1960年代のシロモノらしいのだ。私が遊んでいた当時ですら、レトロゲームだったのだ。

 

そんなゲーム。動かずとも、姿を見られただけでも大満足だった。

 

でも、修理していただけるのならば、きっと馳せ参じるだろうけどね。

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メサイヤコンプレックス

私は2chをよく見る。

 

ただ見ているだけ。

書き込みは、何か怖くて出来ない。

書かれている内容を読むのが楽しいのだ。

 

そう言うのを「ROM専」と言うらしい。

 

後、がっつり「板」という物に直接アクセスするわけではない。

「2nn」という、ニュースが並べられたサイトや、「2chのまとめのまとめ」で色々興味をそそられるネタを眺めている。

 

その中で。

 

「人生が捗る方法」

 

なるスレッドがあった。

どんな方法なのか、とても気になったので覗いてみる事にした。

 

内容はと言うと、「自己肯定感を高める」とか、「楽しむ」など、私も実践している内容が書かれていた。

 

そうだよね。ふんふん。

 

納得しながら読み進めて行くと、否定的なコメントが目立つ様になってきた。

 

—こんな時間に書き込める人間に物を教えてもらいたく無い。

とか、

—この俺様には何も響かない。

等、

一向にアドバイスを参考にしようとはしない人々の声。

 

勿論、ネタも含まれているだろう。

 

そして、表題の言葉を使うコメントにぶち当たった。

 

—いるんだよな、こういう、

 

メサイヤ(救世主)コンプレックス」

 

を拗らせた人間がな。

 

??

 

こんな単語初めて聞いた。

早速wikiで調べてみる。

 

一部抜粋

「基底にある自尊心の低さを他者を助けることからくる自己有用感で補償する人々をも含める。」

 

成程。

 

実は私、

 

鍼灸師

 

だった。

 

資格は更新制では無いので、ずっと鍼灸師ではあるのだが、今は違う仕事に携わっている。人に施術をしなくなってもう7年程経つ。と言うわけで過去形。

 

大学を卒業し、所謂量販店で店員として働いた。そしてある時、レジを打ちながら思った。

 

—向かいの人は、私の事など直ぐに忘れるだろう。私は路傍の石でしかない。それは嫌だ。もっと、人と繋がりたい。深く。強く。

そんな欲求が膨れ上がっていた。 

 

「少年誌シンドローム

 

私の造語。

 

自分には何か特別な才能が宿っていて、何かのきっかけで、凄いドラマが始まる。

それを信じて私は、エサを待つ雛の様に、ただ口を開け鳴き続けた。

一向に始まらない一大スペクタクルと、勝手に過ぎていく時間。

 

自分から動かないと始まらないのでは?

 

そんな当たり前の事を20歳を過ぎてようやく気付いた。

 

仕事を辞め、家族を説得し、飛び込んだ東洋医学の道。

 

そして、紆余曲折あったが、何とかストレートで合格できたのだ。

 

それから十年程、治療家として働く事が出来た。

 

カッコよく書けばこんな感じ。

 

ひっくり返すと、私は要領が悪く、量販店の店員の仕事がただただ出来なかっただけ。

次から次へとやってくるタスクに追いつき追い越され、叱責され、呆れられ、仕事にも私にも、嫌気がさした。

 

そんな劣等感の塊だった私。

他者を救う事で自己も救う。

そんな職業を夢見た。 

 

それが、鍼灸師という訳。

 

正にメサイヤコンプレックスだ。

 

 

あの時にこの言葉を聞いていたら、

 

—自分が気持ちよくなりたいだけだろう。他人様に迷惑をかけるんじゃないよ。偉そうに。

 

と皮肉屋にめちゃくちゃ言われて断念したかも知れない。

 

本当に知らなくて良かった。

 

そして今。

 

私なりの幸せを皆に伝えたい。と記事にした。

 

独善的に押し付けるのでは無く、傍らにそっと置く。そんな言葉を紡ぐ事が出来たらいいなあ。と、日々精進している。

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1周年


 1月30日で、

 

「表と裏の高速回転」

 

ブログが1周年を迎える事が出来た。

 

記念に何かお祝いをしなければいけないなあと考えていた。

 

たまたま昨日は出張で三重県にお邪魔していたので。

 

そうだ、アレを食べようと言う事に。

 

仕事終わりにそそくさと向かう。

f:id:necosiri7:20230201232218j:image

うちの県には存在しない。

 

あの

 

ラーメンだ。

 

 

ジャーン

f:id:necosiri7:20230201200624j:image

…少しお待ちを。

 

今度こそ、ジャーン。

f:id:necosiri7:20230201195534j:image

スガキヤラーメン。

 

お祝いなので、

特製ラーメンを選びました。

510円也。

 

f:id:necosiri7:20230201195922j:image

スプーン?の形が若干変わってる。

以前は端の方にフォークが付いていたような。まあいいや。

 

—いただきます。

 

月日の流れを感じながらしみじみ食べた。

相変わらずの和風豚骨の優しい味が、郷愁を誘う。

 

学生の頃よくお世話になった。

フードコートの一角には必ずあった様な。

 

懐かしく美味しく頂きました。

 

ふう。さあ、帰るか。

 

?!

f:id:necosiri7:20230201203247j:image

何これ。

スーちゃんグッズガチャやん。

しかも、東海限定。

 

対象年齢15才以上。何歳以下?

書いてない。

 

大丈夫だ。

 

ゴクリ。

やるしか。

f:id:necosiri7:20230201203539j:image

f:id:necosiri7:20230201203722j:image

スーちゃんエコバッグが当たりました。

 

おっちゃんがスーパーでこれを出したら、猫しりと思って間違い無いでしょう。

 

いやあ、何とも私らしい記念日となりました。

 

そんなこんなで、

 

コンゴトモヨロシク。

 

おしまい。

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捨てる神あれば拾う神あり

我が演劇部には、所謂部室と呼ばれる場所が無かった。

 

何処かで誰かが、

 

—あっ、あれ部室に置いて来た。

 

というセリフを聞くと、羨ましい気持ちになった。

 

我々が練習する場所は専ら、

 

道教室。

 

放課後空いている教室といえば、ここくらいだった。

 

そして、公演が近くなると体育館の舞台を使わせて貰う。

 

緞帳は上げないで、

 

こそこそ、

 

練習した。

 

いつか、自分達の部室が欲しい。

そんな事を夢見ていた。

 

そんなある日の放課後。

 

私はその時までしらなかったのだが、大道具などを入れている倉庫があるというのだ。

そこを掃除しろとの命を受け、現場へ急行した。

 

場所は自転車置き場の端っこ。

物置きが置いてあった。

 

へえ、これが我々の倉庫だったのか。

 

—さあ、やるで。

 

よっこらよっこら動き出し、中の物を一つづつ取捨選択していく。

懐かしい物やら、知らない先輩が使っていたであろう小道具が我々の目を楽しませてくれた。

 

その中で。

 

14型サイズのテレビがあった。

 

—これつくのかね。

 

確か、校舎の壁面にコンセントがあった様な。

 

あーこれこれ。

 

…つくやん。

 

裏は。

 

ビデオ端子やん。

 

—リールコードもあるやん。

—奇跡やん。

—アレができるな。

 

コクリ。

 

皆の瞳が、鈍く輝き出した。

 

そして次の日。

 

倉庫の中は、三分のニ程何も置いてない空間になっていた。

 

人がくつろぐのには充分なスペースだ。

 

誰が持って来てくれたのかは覚えていない。

スクール鞄の中から出て来たのは、

 

我らがスーパーファミコン様。

 

当時、

 

ストリートファイターII

 

が、大人気だった。

当然、我々も熱中していた。

 

先生に見つかれば、没収モノだ。

 

そんな危険を冒してまで、

 

学校でスーファミ

 

背徳感とスリルでテンションがあがる。

 

さあ、壁面にコンセントを刺して、リールを、からからのばして、倉庫の中へ。

 

テレビとスーファミのスイッチオン。

ソフトは勿論、ストII

 

ついた。

 

やった。

ゲームもできる

 

「部室」

 

を遂に我々は手に入れたのだ。

 

安息の地。私はこの現状に、うっとりしっぱなしだった。こんな空間があれば、あんな事や、こんな事が出来るかもしれない。

妄想が止まらなかった。

 

そんな最中、下校するのだろう、女子生徒が喋りながら近づいて来た。

 

やばい、ゲームもってきてるのがバレる。ボリュームを下げろ。喋るな。

 

息を潜め、彼女達二人組が通り過ぎるのを待った。

 

きっと、電源コードが壁から倉庫に通路を横切っているのを見たのだろう。

 

—これ、なんやろ?

 

女子の、この次の言葉。

私は一生忘れられない。

 

—だから、

 

 

—演劇部って、

 

 

—「気持ち悪い」

 

 

—って言われるねん。

 

 

がーん。

がーんって、本当に聞こえるんだな。

と言う事をこの時初めて知った。

 

そして、それからすぐ倉庫の中の誰かが物音を出してしまい、二人はそれに気づき走って逃げてしまった。

 

友人は一連の流れを見て大笑いしている。

 

「だから」?

「だから」って言った?

 

他にも色々気持ち悪い事をしていた。

あれもこれも、その上での

 

「だから」

 

なのだろう。

そして、皆が言っているのだ。

 

はあ。はあ。胸が苦しい。

そんなに嫌わんでも。そこまで、目立ってないやろ。

 

色々な負の感情が交錯し、ぶつかっては私を混乱させた。

 

結局、倉庫部室改造計画は、これにて幕を閉じた。

そんなセリフを聞いたからかどうかは、もう覚えてはいないが。

 

今思っても、あの時はツラかったなあ。 結構傷ついたで。

 

それから三十年。

 

横に居る妻は言う。

 

—猫しりは、気持ち悪いなあ〜

 

—もっさりして、べたべたして、ぷにぷにしてる。

 

—だが、それが良いねん。

 

 

世の中は広い。

 

「捨てる神あれば拾う神あり」

 

仕事であれ、人付き合いであれ、恋愛であってさえも。

全てに「それ」があると気付いたのは、本当に最近。

こんな私でも、受け入れてくれる世界があるんだと言う事。

 

現状に甘えすぎず、振り落とされない様に、

 

らしさ

 

を大切に、ぼちぼち頑張っていこうと思う。

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ