表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

一矢

今週のお題「わたし○○部でした」

 

私は高校時代、

 

「演劇部」

 

に所属していた。

 

中学生の頃、TVの深夜枠でやっていた

 

ムイミダス

 

と言う番組。

 

 古田新太さん、升穀さん、槍魔栗三助さん(生瀬勝久さん)等、今は押しも押されもせぬ大御所の俳優さんが多数出演していた。

 

 そんな人達の、コントや、絵描き歌、シリアスなお芝居をされているのをみるにつけ、私は心底

 

「羨ましい。」

 

気持ちになった。

 

何と言うのだろうか。

ブラウン管の向こう側は、とにかく楽しそうだったのだ。

のびのび自分を曝け出し、自由に表現し、それが許される世界。

 

この人達は、鬱屈し、下を向く日々を過ごしている私の「対極」に間違いなく居た。

 

その時から、お芝居の世界と言うものに憧れをもつようになった。

 

そして高校入学。

 

たまたま、隣に座ったクラスメイトも、演劇部に入りたいと言う。

中学生時代は野球部に所属していたらしい彼が。

 

私と同じ、変わり者が体育会系にもいるのか、と感じた。

 

 その当時はスポーツや勉強以外で自分を表現する事がはばかられていたように思う。

 

私の地元だけだろうか。

 

演劇部に所属していると言うと

「おお、ロミオっていうん?人前で?」

と、からかわれた。

 

変人の集まり

 

と言う括り。

 

私自身も分かっていた。

そう言う扱いをされるであろう事を。

 

—構うものか。

 

もうこれ以上落ちる事など無いのだ。

馬鹿にするならすれば良い。

そんな自暴自棄な気持ちも私を後押ししてくれ、めでたく入部とあいなった。

 

本当にそこでは数々の物語があった。

今思えば、とても貴重な時間だったと、皆に感謝している。

その中でも、一番印象に残っている思い出を今回は披露したいと思う。

 

2年生に進級し、新入生に対しクラブ紹介をする。

くにがまえのような校舎の中庭で説明をするのが通例だった。

3階建ての窓から生徒は覗くスタイル。

 

この機会に、

 

一矢報いてやりたい。

 

誰に対してなのか、何の為なのか分からない。説明のつかないエネルギーが沸々と湧いてきた。

 

何をしてびっくりさせてやろうか。

色々考え、出てきた答えが、

 

ダンス。

 

中庭で踊ってやるのだ。

気持ち悪いと思われようが関係ない。

やってやる。

 

有志を募り練習した。

 

そして本番。

 

—次は演劇部の紹介です。

 

よし、行こう。

女子部員がラジカセのボタンを押した。当時大ファンだった、CHAGE&ASKAさんの「モナリザの背中よりも」が流れ始める。

 

最初はバラードナンバーかと思うような前奏。

我々もゆっくりと、所定の位置へつく。

タツキというヤツだ。

 

曲は突然、ポップな感じに変わる。

簡単なステップで踊り始める我々を見て生徒達がざわつき始める。

 

参加してくれたのは、私含めて5人。

暫くして、踊っている4人の自己紹介が始まる。

 

女子部員にあらかじめ渡していた紹介文をマイクで言ってもらう算段だ。

紹介された人間は、中庭中央で自己表現のマイムをする。

皆の紹介文、勿論、私自身のも私が考えた。

たしか、突拍子もない事を書いた。

ナルシストで女ったらし、泣かしてしまう、とか。

手鏡をもって髪の毛を触る様なマイムをした記憶。

 

紹介がひと通り終わった。

曲が突然止まる。

 

すると、着流しに番傘、下駄を履き、坊主頭。

アカペラで

 

「浪花こいしぐれ」

 

を歌いながら登場したのは、

冒頭に書いた体育会系の彼。

 

滑り芸的な空気が漂う中、曲再開。暴れる様なステップを踏んでフィナーレへ。

 

最後のタイミングでバンド演奏の様にジャンプしようと申し合わせていた。

 

だが。

 

練習中の事。

その内の一人がバク転をしたいと言い出した。

バク転が出来るのは一人だけなので彼だけ目立つけど、別に。どうぞ。

 

そして、曲が終わる瞬間。

彼以外はジャンプ、彼バク転。

 

失敗?!

 

おでこをしたたか打ったような。

ヤバイ。すると、また飛び起きて、もう一度トライ。

 

成功。

 

ふう。終わった。

 

気づくと私達は喝采の中心にいた。

360度ぐるりから、拍手やら歓声やらが聞こえた。

 

退屈な日常の中、虐げられし人間が背伸びしてみられた最高の景色だった。

 

もう一度あの高揚感を味わってみたいと、私はブログを初めたのかもしれない。

 

おしまい。

 

 

—あとがき—

 

バク転事件の影響かどうかは定かでは無いが、次の年からクラブ紹介は中庭では無く、体育館で行われる事となった。

 

新入部員は、あれを見て、入部を辞めようかと思ったらしい。

 

 

 

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