今週のお題「人生変わった瞬間」
「適応障害」
10年程前の事。
心療内科を受診した際、私はそう診断された。
あの当時、私は普段よりしている、高速回転をさらに早く、レッドゾーンまで回し続けていた。
慣れない仕事や、家族、お金など、心配事が山の様に積み重なっていたのだ。
それは、複雑に絡み合った糸の様に、何処から解いて良いのか分からない程、どうしようもなくこじれていた。
回しても回しても、何処にも引っかからない。虚しい空転は続く。軋む心の音がどんどん大きくなってきた。
そして、遂に、私のエンジンは焼きついてしまった。
防衛本能が働いているのだろう。
あの近辺の記憶は、本当に曖昧で、思い出す事も今となっては難しい。
ペシャンコになった紙風船の様に、よるべなき心は虚空を彷徨っていた。
何とかしなければ。
このまま通院しても、改善する様には何故か思えなかった。
途方に暮れていた私に吉報が入る。
その時、勤め先の同僚が、カウンセラーを目指しているのを知ったのだ。
—私の勉強にもなるから。
と彼女は言ってくれ、私の相談相手なってくれた。
悩み事を打ち明けて行くうちに、私にとって良い書籍があると教えてくれた。
いくつか教えてくれた本の中、私に一番気付きを与えてくれたのが、冒頭に紹介している
「ソース」
と言う本だった。
「ワクワク」
この気持ちが、全てにおいての原点である。
一言で述べるとこの本は、そう言っている。
今まで、好きな事を我慢している自分に酔ってきた。
いや。正確に言うと、好きな事をさせてもらえなかった。
誰に?
やりたい事、興味のある事、思いつく度に、皮肉屋が否定する。
ある時は虐めグループ、またある時は兄の顔を借りて。
オマエミタイナモノガ。
?
まてよ。
皮肉屋を作り出したのは誰なのだ。
私、じゃないのか?
この時初めて気がついた。
自分の中に自分を縛っている、もう一人がいると言うことを。
私は、
猫が好きだ。
何故か。
分からない。
いつからか。
分からない。
—良い大人の男が猫が好きなんてね。
普通、犬だろ。大型犬。
猫なんて。恥ずかしいヤツだな。
誰が言っている?
私。
今となれば、完全に反駁できる。
馬鹿馬鹿しい話だが、あの時は本当に何も出来ず、いいなりになっていた。
その時から、猫が好きな私と言う、
軸
ができた。
誰が否定しようが、攻撃してこようが揺るがない。
自らの旗を突き立てる事に成功した。
他の人に言わせれば本当に些末な、どうでもいい事かも知れない。
しかし、私に言わせれば、大発見だった。
ただ、これは今現在の私が振り返ってのお話。暴風雨の中、雷鳴轟き、稲妻が私を切り裂いた。なんて言うドラスティックな変化では無い事も付け加えておく。
この時より、自己肯定感を、どんどん大きくして行く方向に努力していった。
皮肉屋は消えないが、それに対抗しうる自分の構築と言う事になるのだろうか。
そして今、
あの時よりも私は、
私の事が好きだ。
それだけの話。
ただ、それだけ。