表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

小噺

王様。

 

王様よ。

 

いるんだろう?

 

入るよ。えー、よっこらせと。

 

昼日中まで、部屋ん中閉めっぱなしでおやすみたぁ、いいご身分だね。

 

王様だからいい?

 

 どんな身分でも、やっていい事といけない事位わかんだろう?

 

酒ってのはね、呑んでもいいけど呑まれるなってね。むかーしから言われてるんだよ。わかってるのかい。

 

…また、やっちまったんだってね。

酔っ払って、星を、星座を、壊して回ったと。

 

こうなったら、こうなるわな。

いつも通りにサ。

 

 アンタんとこの小倅が、村中のいろんな物を巻き込んで回ってるよ。与作の嫁までひっつけちまって…

アイツ泣いてるよ?ようやくできた嫁さんだよ?

 

オイラだって被害者だ。ちょっと呑みすぎたってなもんで、夜風に当たろうと表にでたらよ、真っ暗なんてもんじゃねえ。

いくら夜でも月明かりとかよ、星の瞬きくれえあるだろうに。

 

ひとつっぽしひとつありゃしねえ。

 

お陰様で、この膝小僧の傷を作らせて貰ったって訳だ。

 

本当に勘弁して貰いたいんだよ。みんなアンタに迷惑してるんだ。

 

え、いや、おらぁアンタに説教しにきた訳じゃねぇんだ。

 

ひとつ、頼みたいことがあってな。

 

出来た塊を空に打ち上げんだろ?

 

そしてそれを星にするんだわな。

 

今回はサ、いっちょ…よ、

 

 オイラの塊を打ち上げては貰えねえだろうか?

 

…実はよ、オイラよ、小さい頃から少しずつよ、色んな物をくっつけて来たんだよ。おめえの小倅みたいによ。

 やれ、将棋のコマや、バナナや、船やってよ。

 

 関係のねえ物、ガラクタをいーっぱい引っ付けてよ。そう、それこそ高速回転よ。

そんなこんなで五十近しになって、出来た塊がよ。

 

お星様になるんだろうかってな。

 

見てみてえんだわ。

星屑になってしまって、燃え尽きて流れ星ってのもアリだ。

 

星になったら儲け物。

いっぱい打ち上がったらよ、繋げて星座にするって寸法だ。

 

名前?おうよ、猫しり座よ。

 

…笑うなよ。

 

いやあ、なんかよ、あれだよ、履歴書。

オイラよ、いちめぇでは足りねえんだ。

職歴ってやつが。

 

少し齧ってみてよ、苦かったり、不味かったらすぐに吐き出してよ。

一番短くて、

 

二週間だ。

 

何が?在職期間だよ。

これは、笑っていい。寧ろ笑ってくれ。

 

仕事を転々としてるとよ、我がのよ、存在がよ。

ちーっぽけだと思う様になるのよ。

 

でぞんれー、何?

 

レゾンデートルか。

それだよ、それが薄っぺらくなっちまうんだよ。ぺっちゃんこの紙風船だよ。

 

だけどオイラは諦めなかったね。

 

 

考える事をよ。

 

悩む事をよ。

 

 

そして、この歳になって、今まで無意味だ、無価値だって放り投げてたもんが、突然ひかり出したんだ。

 

こりゃひょっとしたら、ってな。

やりたい事を、今までの経験で繋げたら、綺麗な星座ができるんじゃあないかってよ。

 

ま、無理にとは言わねえよ。

 

ふと、思っただけだからよ。

 

 

後さ、与作の嫁さんだけは、引っ剥がして返してやんなよ。

 

酒はほどほどに、な。

 

「パパがSwitchやりながら泣いてる〜」

 

 

 

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