この間、仕事中に電話がかかってきた。
スマホのディスプレイを見ると、
「カナダ」
と表示。
最近私は歳のせいか、物忘れが激しい。ふと思った事を行動に移している最中に忘れてしまう。調べ物をして、スマホを触っている最中に忘れてしまう。トイレに行きたかったはずなのに冷蔵庫を開けている、等。
コレも自然の摂理と諦めてはいるが。
電話は鳴り続ける。
ああ、
「金田さん」
ね。勿論全く覚えていない。自分の記憶に全く自信がないので、暫く同調しながら糸をたぐって行こう。
そう思い、通話ボタンを押した。
いつもは、私が
—もしもし
と機先を制するのだが、今回は向こう様の出方を見ようと、黙っていた。
すると、聞こえてきたのは、
自動音声。
—〜ファイナンスです。支払い期限を過ぎて法的措置に移行します。オペレーターと繋ぐ場合は1️⃣を押してください。
…押さない。押すものですか。
くそ、振り込め詐欺電話か。
腹たち紛れに通話を切らないでほうっておいたら、程なく切れてしまった。
様々なシチュエーションを考え、動かない頭をむりくり働かせてこの結果。
怒りの感情が湧き上がって来た。
仕事が終わり、まだその気持ちに整理がつかない。
普段はそんな事しないのだが、通話履歴を見た。
—カナダってなんやねん。
見れば、
カナダは、金田では無く、国の方。
そして、文字には続きがあり、
「ケベック」
と、記されていた。
どんな都市だ。
イライラしながらも、その土地を調べてみた。
—…。とても素敵な街じゃないか。
歴史を感じさせる街並み。
セントローレンス川沿いのシャトーフロンテナック。
ケベック要塞。
何処も絵葉書になるほどの素敵な風景。
外国旅行経験皆無の私。
しかし、この景色達を見て行ってみたくなってしまった。
くそぅ。
一本の迷惑電話。
まだ、私の感情は、上手く着地出来ずにいる。