インターネットの普及は、調べる事のハードルをかなり低くしてくれた。
画像や曲を調べればすぐに答えてくれる。古い物も、誰かしらアップしてくれており、懐かしい気持ちに誘ってくれる。
ただ、自分の頭の中で残っている記憶の紐を手繰り寄せる楽しみが少し減る様な気がして、あえて調べない事もある。
以前お話しした、ダイエーの屋上のゲームセンター。そこに行く為にエスカレーターに乗る。屋上までは繋がっていないので、階段まで移動する。
そのエスカレーターの辺りに、当たれば景品が貰えるゲームが2台並べられていた。
片方は鳥、もう片方はロボット。
鳥は「あたれ、あたれ、こんにちは、こんにちは」
ロボットは「こんどはあたるよ」
2つの機械は繋がらない会話を続けている。
30年以上たってもこの声は私の頭の中に残っている。
しかし、映像は上記の絵を掘り起こす事で精一杯の様だ。
もう一つ。月に一回母親とお出かけする事があった。その道中にも、ゲームセンターがあった。
テーブル型の筐体が数台と、壁面にメダルゲームがあった。
そこに置いていた、メダルゲーム。
国取りゲームなのか、二つのルーレットが回る。ルーレットが止まる動きがとても「良かった」のだ。
上半分の日本地図も定かでは無く、ルーレットの動きに心を奪われた。
このゲームをしたかどうかは覚えていない。やっていたとしても、一回二回したところでルールが分かる筈もなく、それ以上母親にねだるのははばかられた。
それ以前に、そこにいるだけで、雰囲気だけで、私は満たされていたのだろう。
きっと、調べればすぐに確認が出来る。ああ、こんな物だったかと。
心のどこかが引っかかる。知った瞬間に何かが失われてしまいはしないだろうか。
その何かは分からないが、もう少しこのままにしておこう。
いつでも「知る」事は出来るのだから。