表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

M→N

12月31日、大晦日

PM7:00

大阪上空。

 

ヘリコプターかドローンか分からない。ビル群をカメラが捉えている。

 

何処かで和太鼓を叩いている音が微かにきこえてきた。

 

しばらくすると、千葉繁さんのナレーションが始まる。

 

—時は戦国。世は乱世。

群雄割拠のこの時代。

 

C、R、W、色々あれども、待てど暮らせど、どこにも無い。

 

無いのなら

 

 作ってしまえ

 

  不如帰

 

ジャンル人数何でもござれ、決まっているのはただ一つ。

 

4分間の時間のみ。

 

己がお笑い魂をそこに叩き込み、天下統一を成し遂げろ。

 

ABCDEFGHIJKLときて、

 

Mの次には何が来る?

 

「N」

 

Nは、

 

NEWのN。 

 

NEXTのN。

 

そしてそしてそして、

 

ネタの

 

N。

 

N1グランプリの開幕だ。

 

ナレーションの間、映像は大阪城に近づいていく。

無数のサーチライトがお城上空を無秩序に動き、辺りを照らす。

 

天守閣ちかくで、直径2m程の大太鼓を叩いてる人が写ってきた。

 

カメラが地上に近づく。

 

褌一丁で、一心不乱に鉢を振り回す。

魂のこもった演奏だ。

ナレーションが終わってまもなく。

うち終わり、こちらを向く。

 

高田延彦さんだ。

 

—天下を狙うお笑いモノノフ

 

出てこいやー

 

そして、画面はスタジオへ。

司会の今田耕司さんと上戸彩さんがマイクを握る。

 

—さあ、始まりました。N1グランプリ。司会は今田耕司と、

 

上戸彩です。

 

—えー、M1と何が違うんでしょうね。

 

—基本的には、全く一緒です。

 

—いやいや、これだけ高田さんにやってもらって、一緒て。私たちで話してても仕方ありませんので、責任者に来てもらいましょう。

 

—審査員の方々の登場です。

まずは、審査委員長、ダウンタウン松本人志さん。

 

他数名が紹介され、皆席に座る。

 

—兄さんどないなってまんの。N1って。

 

—うーん。まあ、今言う事かどうかはアレやけど、漫才の形というか何と言うか、変わってきてるやん。コレを漫才って認めるか認めへんか。そんなんで、評価っておかしくないかと。

おもろいヤツがおもろいでええんちゃうかって。そんで、M1が一番夢あるやん。

 

—いやいやいや、R1にもWにも夢ありまっせー。

 

—まあまあまあ、ね。流れ的に、M1がN1になるのが1番自然じゃない?一年の終わりに、一番オモロい芸人決めんのもええかなと。

 

—まず、平日の深夜に一回やってみてからでも良かったんちゃいますの?

 

—うーん。ここにいる、審査員達は間違いなく、実力者なんで。誰がチャンピオンになっても、異議はないですよ。ね。

 

—皆、映画のアバターかと思うくらい青ざめてますやん。

 

—間違えた審査したら、僕が、年越させないんで。

 

—兄さん時間も操られる様になりはったんでっか。

 

時間が無いのか、上戸彩さんが遮って進行。

 

—さあ、エントリーナンバー1番。

YES!アキトさんです。

 

ゲレゲレゲレオーオーオーオーオー

 

—ダァブルゥプァツィンクオォ!!

 

 

私はお笑いが大好きだ。 

 

 子供の頃、関西ローカルで「四時ですよーだ」という番組を月曜日から金曜日までやっていた。

 司会は、ダウンタウン。友達を失う程、放課後は毎日釘付けになった。

 

 私が生まれた1970年中盤は、ビートルズや長嶋選手、ピンクレディなど日本中が熱狂した時代が過ぎ、何か冷めていた様な気がする。

 

 その中にあって、ダウンタウンは少なくとも私にとってのヒーローであった。

 

 特に松ちゃんのボケは、合気道の達人の様に、力を使わず相手を爆笑させる。

 

  発想の天才。

 

翻って私はそんな面白い言葉が一つも浮かばない凡人である。

早々にお笑い芸人への道は諦め、尊敬と憧れの対象になっていった。

 

そんな中、始まったM1グランプリ

当時、優勝賞金1000万円は賞レースとしては破格。

 

私はテレビに齧り付いた。

ブラウン管越しにヒリヒリした緊張感が伝わってくる。

 

芸人人生を賭けた戦いがそこにはあった。

 

初期のM1は、

 

例えるなら

 

ボクシング。

 

ボケもツッコミも高次元でまとまっているオールラウンダー。

 

軽妙なフットワークでボケを連発するスピードスター。

 

溜めに溜めた間から、渾身のボケを放つ一撃必殺タイプ。

 

変わった視点から、不思議なワールドへ我々を誘う変則フリッカーデトロイトタイプなどなど。

 

そういったスタイルで、口から発せられる

 

言葉

 

で雌雄を決していた。

そして、開催10回目でM1は一旦終わる。

 

そして、2015年より再開された。

 

最近のお笑いも私は理解できている、つもり。ランジャタイも、ヨネダ2000も、マジカルラブリーも、勿論面白い。

 

ただ、やはり、漫才かどうかが気にかかるのだ。

 

後期のM1は言うなれば、

 

総合格闘技

 

 

きっと、審査員達もそんな理由で点をつけ難いのだろう。

 

 

冒頭に書いたのは私の願望だ。

これなら、すんなり見る事ができる。

 

M→N。

 

「お笑いバーリトゥード

 

が、私は見たくて仕方がない。

 

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