表と裏の高速回転

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教習指導員時代。

なりたての頃は空手の、

 

「百人組手」

 

の様に次から次へと迫ってくる教習をなんとかしのぐので精一杯だった。

 

指導要領に沿ってはいるものの、教えさせてもらいながら、

 

これでいいのか?

自分は出来ているのか?

 

不安で仕方なかった。

 

そんなある日。

 

社会学を専攻されている生徒さんとお話する機会があった。

 

社会学ってどんな学問なん?

 

—何でもです。

人が集まれば、社会です。

 

—へー。なんでもかいな。

広すぎやね。

 

と、その時は忙しさにかまけ、聞き流した。

 

あの時のなんて事ない会話。

ずっと引っかかっていた。

 

何故かこの一連の会話は、ボディブローの様に私の心を疲弊させて行く。

 

人間は一人では生きられない。

 

社会からは逃げられない。

 

そんな事実を突きつけられた。

 

知っていたさ。そんな事。

 

今までの人生。

 

人気者の時もあったし、

いじめられっ子も経験した。

 

若いうちに、ヒエラルキージェットコースターに乗せられ、めちゃくちゃに上がったり下がったり。

 

私は、したたか疲れてしまったのだ。

いつまで、続くのだ。

こんなくだらない茶番は。

 

何処に居ても、組織の一員にならざるを得ない。

歯の浮くようなテンプレートの会話劇。

 

そんなシーンを見せつけられる度、私は拒絶反応を示す。

 

そして、指定席に座る。

 

社会不適合者の変わり者。

 

仕事を転々とした理由。

それは、くだらない世界ではない場所が何処かにあると一縷の望みを託したから。 

 

あの頃と比べると随分と泳ぎが上手くなった私だが、たまにこんなエアポケットに落ちてしまう。今回はどれくらいの間苛まれるのか。

 

そんな時。

 

以前購入した、野いちごの苗。

実は、一株を残し枯れてしまった。

 

—抜かないといけない。

 

そう思いながら放置していた。

 

すると、

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枯れた横から新芽が生えている。

 

小さい小さいそれは、私の貧弱な表現能力を遥かに超える説得力があった。

 

—そうやんな。

 

私は、私を知っている。

 

当たり前の事につまづいているフリをして、誰かに慰めてもらいたいだけなのだ。

 

ただの寝不足。

 

もう、寝よう。

 

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