私の前職の内の一つで、
「教習指導員」
がある。
簡単に言うと、自動車教習所の教官だ。
私は、そう多く無いが、色々な職を転々とした。経緯などは後々語る機会があれば話そうと思っている。
普通自動車の実技や学科など、一通り教える事が出来るまでは在職していた。
その中で、私が苦労したのが、実技の一発目。正確には2時間目になるのだが、初めて生徒様が実車のハンドルを握る時間。教習コースの外周をぐるぐる回るだけ。
だけ。
だけ?
ご冗談を。
この時間が、自動車教習所が楽しかったか、嫌だったか運命の分かれ目となる。と私個人の意見だが、断言する。
ほとんどの生徒様は、緊張している。
私はあの手この手でリラックスしてもらえる様に努力する。
教習車には、助手席にもブレーキペダルがあるので、こちらは全然怖く無い。
怖いのは、緊張がパニックに発展してしまい、生徒様が車を敵にしてしまう事だ。
頭で自動車を理解しようとしないで。
歩くとき、都度右、左足動かそうと考えてないでしょう?
絵を描くとき、ラフスケッチって、全体から描くでしょう?
さまざまな視点から、生徒様の腑に落ちる文言を投げかける。
だが、力及ばずこの時間の項目を達成できない時もあった。
そういう人達は、車が透明だったら良いのにと口をそろえて言っていた。
それを聞くたびに、私は幼い日を思い出さざるを得なかった。
ダイエーなど、総合スーパーの屋上にあった遊園地。
ちいさなSLや、トランポリンがあり、テントの様な屋根の下にはゲームセンターがあった。
薄暗く、少し埃っぽく、筐体の音が混ざり合う、そんな不思議の国の中にそれはあった。
名前は覚えていない。
下の道が一定速度でスクロールし、ハンドルを操作して自動車を操る。
道を外れない様に進んでいけば、遊べる時間が増える。
何の変哲も無いゲームだったが、私はハマった。その当時、小遣いを貰える年齢では無かった。ただ、お金を入れなくてもハンドルが回せたので、タイヤの向きを変えて遊んでいた。
このゲームが秀逸な所は、ハンドルを回したら回した分タイヤが曲がる。
そして車体がそれについて傾く。
挙動がリアルなのだ。
車体のすぐ先をみると蛇行する。
ある程度先をみると、安定する。
実車と同じコツがあった。
タイヤを外から見る事が出来るので、いい練習ができるのでは無いか。
そんな事をひとりごちた。
あのゲームを見なくなってからだいぶ経つ。
指導員を経た今、私はエンディングまで辿り着けるだろうか…。
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