私が住んでいた家の前には、こじんまりとした公園があった。
滑り台と砂場、動物の形をした置物など、幼少期であれば満足できる設備が整っていた。
その中で、異彩を放っていたのが上記イラストのブランコだ。
危険という理由で撤去されてしまったのか、今ではとんと見なくなってしまった。
私達はこのブランコに熱狂した。
危険だからこそのスリルが味わえる。その時の高揚感、一体感は格別な物であった。
当時をご存じない方に説明させて頂く。
普通に座席に座る役と、漕ぐ役に分かれる。座る者も漕げるのだが、「漕ぐ」役が存在する事によって、所謂「スリル」が増幅するのだ。
上記イラストの様に、スタンバイし、
ブランコは始まる。
両者は協力し合い、振幅を広げて行く。
そして、最終的に座面の端と、足を置く場所がぶつかりだす。
それを繰り返すうちにトランス状態に入ってしまうのだろうか。
私は笑い続けていた。
目の前に近づく鉄板の編み模様と抜ける様な青空が代わる代わる現れる。
ただただ楽しい、楽しいだけの時間。
飽きたら、砂場に行って、山を作り、トンネルを掘りあう。穴の真ん中辺りで友達の手に触れる。
今思えば、貴重な経験だった。
あの時、間違いなく私は、生き生きていた。
今、子供に付き添って、公園に行く事がある。
あの頃の感覚になるには、地面がいささか遠くなり過ぎたかも知れない。
子供は私の代わりにはしゃぎ回ってくれる。
こんな景色もまんざらではない。