表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

もしもの話

—もし〜だったら?

 

雑談等でよく出てくる質問。

私はこう言う類のものが苦手だ。

理由は、真面目に考えてしまうから。

 

「くそ」がつく程に。

 

文章に無い様々な条件を自分の中で勝手に考え、思考が止まらなくなって行く。

ありもしない話に振り回され、最後は、私も相手も疲れ果ててしまう。結局何も残らない。

 

「気軽に」

 

そんな事は言われずとも分かっているのだが、性分なのですいません。変えられない。

一時が万事こんな調子だから、私は人に好かれにくいのかもしれない。

 

なので、今回は人との会話では無く、自分で自分に質問してみた。

 

—もし、過去に戻れるとしたらいつがいい?

 

うん。私は、間違いなくこう答えるだろう。

 

「小学四年生」と。

 

勿論、外見は小4、10歳だ。

今現在の記憶を持って過去に戻る事とする。知能は、別にどっちでもいい。

 

あの時は本当に楽しかった。人生で一番と言っても過言では無い。

漫画によくある、新学期が始まっても進級しない設定。あんな風にずっと小4がループして欲しい位に。

クラスの皆で担任の先生の家に遊びに行ったり、放課後、友達と誘い合わせてザリガニ釣りをしたり、公園でエッチな本を見つけたりもした。

 

今日はクラスの皆全員と、話してみよう。なんて、今の私からは想像もつかない位、ポジティブな発想が出たりもしたなあ。

 

初恋も丁度この頃だ。

 

その子にちょっかいを出して追いかけ回され、この上なく嬉しかった。

 

そんな、数ある出来事の中、一番思い出に残っているのが、

 

「お楽しみ会」

 

クラスで色々な出し物をする。

クイズや、ジャンケンゲーム、そして、お芝居。

 

—豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ。

 

こんなセリフと共に、本物の豆腐をぶつけられた。劇が終わってからのアンコールを受け、2回程。

こんな楽しい記憶があったから、高校で演劇部に入ったのかもしれない。

 

そんなお楽しみ会の中でも、心に焼き付いているのがある。

それは、

 

紅白歌合戦

 

私がどうしてもやりたくて、実現させた。

その年の歌合戦。司会の加山雄三さんが、少年隊の仮面舞踏会という曲を

間違えて、

 

—少年隊で、仮面ライダー!!

 

と、コールした。

 

これがやりたいと、友達に歌ってもらう算段をした。勿論司会はワタクシ。

そして、大トリは、小林旭さんの

熱き心に

を熱唱し、フィナーレ。

 

終わった後、誰からとも無く、私にリクエストが来た。

 

友人に、やってもいいかなと、目配せをする。

 

コクリ。okだ。

 

披露するのは「小森のおばちゃま」のモノマネ。

私を人気者にしてくれたネタだ。

 

—価値を下げるな。

 

あの時、友達がマネージャーの如く、やっていい時を判断していた。

 

教室は大爆笑。

皆、最高に盛り上がって会は終了した。

正に人生のピーク。

 

 

…この事は墓場まで持っていこう。

 

 

と、思っていた。

 

ええい。思い切って言ってしまおう。

 

実はこのモノマネ。

 

私のオリジナルでは、

 

無い。

 

当時、とても仲の良い友達が居た。彼は言うなれば、

 

「ワードモンスター」

 

飼っていたハムスターの名前は、

「ネンブルリ」

朝の挨拶は、

「マヨネーズ、モーニング」

その他の多くは残念ながら忘れてしまったのだが、全く想像の及ばない場所から生まれる言葉達に、私は驚きと尊敬の念を抱いた。

 

そんな彼の「小森のおばちゃま

 

タレントで、映画評論家の小森和子さん。特徴のある喋り方で人気を博していた。片岡鶴太郎さん等が、モノマネをされていた記憶。

 

しかし、彼のそれは単なるコピーでは無かった。

 

—おばちゃまは、もう少し歌が上手かったらなぁ、っておもうのよ。

 

—おばばばば。

 

似ている訳では無い。

鼻声でこのセリフを言うだけ。

 

ただ、この最後。今流行りの勢いと誇張。そんなモノマネをその時彼は既に会得していたのだ。

 

私はこれを駆使して一躍スターダムにのし上がった。自分のネタとして。

 

—それ、俺の面白いやつや。

 

と、言われなかったのは何故か。

実は彼、小3になる前に、引っ越してしまったから。

 

その事をひた隠し、今まで生きてきた。

 

もし、その頃に戻れたら。

そのネタを、私は披露するだろうか。

いや、「彼の」と前もって言ってしまうか。

あるいは、彼にやっていいか、五駅程距離の離れた家まで聞きに行くか。

はたまた今から、彼にありがとうって言ってから過去に行くか。

 

ほらまた、そんな事まで考える。

だから、疲れんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別お題「今だから話せること