—いい所に連れて行ってやる。
私が小学校の中学年くらいの頃、兄から言われた言葉だ。
どこに連れて行かれるのだろう。
私は不安に駆られた。
兄は、危ない遊びに度々私を同行させた。
野犬が出るスポットに行こうとか、長い用水路のトンネルをくぐって、川に出る等。
今回も、どんな目に遭わされるのか。
気後れしながらも、兄と兄の友達の後をついて行く。
着いた場所は、我々が通う小学校だった。
良かった。
学校ならば、そこまでの危険はなかろう。
その日は休日で正門は勿論閉まっていた。
だが、裏門というのか、裏口は、そもそも扉が無かった。
そこから3人、コソコソ入って行く。
そこから最寄りの校舎の入り口付近で、二人の足が止まった。
—ここだ。
兄は、校舎の側にある、崖の上を指差した。
見上げると、ブロック塀が連なり、頂上には緑色のフェンスが立ちはだかる難所だ。
私以外の二人は、難なくスイスイ登りヒョイとフェンスを跨ぐ。
—早くこいよ。
分かっている。どうにかこうにか登りきり藪の中の声について行った先には、
赤い色。
なんと、それは
野いちご
だった。
既に二人は夢中になって食べている。
どれ、私も一つ。
この時、野いちご初体験。
小さな粒で構成されている普通のとはまた違ったいちご。
とても、みずみずしく甘酸っぱくて、
美味しかった。
時折り兄達は、
—これは、どうやろ?
—覇王やん。
等と、粒の大きな物に名前を付けていた。
私も覇王を見つけて食べた。
大粒のものはやはり甘みが強く、一段と美味しかった。
あの時の感動。
もう一回味わいたいと、フリマサイトで見つけた株。
どうか実をつけてくれないかな。