表と裏の高速回転

色々な気持ちを忘れない様に

もうそうへき

—熱戦の続いた猫しり場所も、千秋楽、結びの一番を迎えました。

 

東の横綱

 

「塩の富士」

 

そして、西の横綱

 

「稀勢の砂糖」

 

このニ横綱の取組となります。

 

共に全勝でここまで来ました。

どちらが賜盃を手にするのか。

鬼気迫る仕切りが続いておりますが、向正面の驚安親方。

どうですかね、この大一番。

 

—そうですね。塩の富士は、不知火型の土俵入りが意味する通り、攻撃の力士です。方や、稀勢の砂糖は雲竜型です。攻防一体の取り口ですけども。

うーん。

まあ、始まってみないと分かりません。

すみませんが、私も今日は一観客ですよ。いい所から見させて貰ってます。ははは。

 

—ありがとうございました。

 

行事が軍配を返しました。

さあ、時間いっぱい。

 

場内凄い大歓声です。

両者体を拭って、手にするのは

 

かたや、塩。

 

そして、

 

こなた、砂糖。

それぞれまいて土俵中央。

 

—はっきようい、のこった。

 

お互いの身体が勢いよくぶつかります。

がっぷり四つの体勢になった。

 

—のこった、のこった。

 

—のこった、のこった。

 

—相四つのまま、両者うごかない。

いや、動けない。

 

両者すごい汗が吹き出しています。

 

—はっきよい。のこった。のこった。

 

—おお!両者投げの打ち合い!

もんどり打って土俵下に!

さあ、軍配はどちらに上がるのか?!

 

—ねえ。私の話、聞いてへんやろ。

 

—…聞いてるよ。

 

—あのコーヒーはキレが凄かったな。決して薄い訳じゃないのに、スッキリ飲めたよね。

 

—うん。美味しかったなあ。不思議な感じやった。

 

何とか妻の話は乗り切れた。

ただ、私は上の空だった。

何故なら、妄想に振り回されていたから。

きっかけは、先程行ったカフェ。

 

妻が注文した、

 

「フレンチトーストベーコンのせ」

 

フレンチトーストは、私にとってオヤツ。

 

だって甘いから。

 

ベーコンは、おかず。

 

だって塩からいから。

 

その二つが、一つのお皿に乗っている。

半分にした二分の一斤位のパンの上に綺麗にベーコンが四切れほど並んでいた。

 

もう既に理解が追いつかない。

 

—食べてみる?

 

切り分けた一つのそれを、妻は私に差し出した。

 

おっかなびっくり口に入れる。

 

一噛み。

甘くふわふわしたパンの甘みがする。

二噛み。

ベーコンの塩っぽさがやってくる。

そこからも、交わらない甘みと辛みが次々とやって来る。

 

うーん。

 

妻は、

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ういっしー。

の連呼。

 

不味くはないんだ。

決して。

きっと、理解出来ない私が悪いのだ。

 

—塩の富士〜

 

—おお!軍配は塩の富士に上がりました。座布団が舞います。

…おや、審判員が土俵に上がりましたよ。

 

—只今の取り組みについて説明いたします。軍配は塩の富士に上がりましたが、土俵を割るのが同体とみまして、取り直しと致します。

 

この大一番、暫くは終わりそうもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原風景

先日、ニュース番組のお天気コーナーで、

 

「夜桜」

 

中継をやっていた。

 

場所は、うん。

 

行ける距離だ。

 

さっそく後日。

仕事終わりに家族を誘い、行ってみた。

 

そこは「紀三井寺

 

長く急な階段を登るだけの価値は、充分ある。

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少し時期が遅かったかも。

葉桜になりかけていた。

それでも、

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圧巻の景色だ。

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散った花びらが水面に浮かぶ。

 

乙だ。

 

今まで昼の桜しか見てこなかった私。

その上、

 

ごりっごりの団子派。

 

花だけを愛でる。

こんな日が来ようとは。

 

嘘の様に心が動く。

体も。

 

確変が続いている間に色んな事を経験しよう。

後悔のない様に。

 

そして、今回撮った写真の中で一番フォトジェニックだったのは、

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この写真。

何故か強烈に郷愁を感じた。

 

こんな風景を

  通ってきたのか

 

   はたまたこれから

         通るのか

 

 

今週のお題「お花見」

反抗期

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この写真。

以前から作りたいと言っていた、プラモデル。

ようやく色をエアブラシで塗ってみたのだ。

よく見て頂くと、所々ハゲていて素地が見えてしまっている。

 

—まあ、後で塗り直したらよい。

 

この境地に至るまでどれだけの時間がかかったか。

 

エアブラシを購入したのは昨年の6月。

それを皮切りに色々な物を購入した。

 

ニッパー、塗料、ヤスリ、ピンセット、接着剤などなど。

 

準備は早いうちにできていた。

 

後は組むだけ。

塗るだけだ。

 

いや、その前に。

参考にと、見たYouTube

 

これがいけなかった。

 

次々と見せつけられるプロの技。

 

合わせ目消し?

下塗り?

マスキング?

 

完成したそれは正に工芸品の域。

これが、私にできるのか?

胸が泡立つ。呼吸が浅くなる。

すると、

 

—できるわきゃねーだろ。

お前みたいなもんが。

 

皮肉屋登場。

 

—何回プラモ作ったよ?今まで。

数える程やろ?その上満足の行く出来は一個もあらへん。

 

あのな、

 

お ち つ け よ

 

怯えてんなよ。

新しい世界に顔つけてすぐに上げんな。

怖ても息止めて目ぇ開けて少しじっとしてろ。

 

エアブラシなんて初めて使うんやろ?

何が「出来るのか?」やねん。

出来るわけない。

 

 

少しずつ経験を貯めるんや。

色々味わえ。

そしたら、いずれ出来るようになるんやろ。

 

ホンマ、お前は何に対しても、誰に対してもそうや。

 

怯えて、構えて、切り抜けようとする。

 

一回深呼吸して、余裕を持て。

 

いままでも、ワシの声も最初の一声だけ聞いたら、逃げていってたやろ。

皮肉屋ってなんやねん。

クソムカつく名前つけやがって。

お前の為に言うたろ思てんのにやなぁ。

いや、マジで、立つ瀬無いで。

 

ええか、

 

な げ だ す な

 

う ち か て

 

よ。

自分に。

 

—ハイ、そうです。

 

イヤ、そうでした。

 

今までは。

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—これでええんやろ?

文句あるか?

 

ぼくは今、少し遅い反抗期に差し掛かっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今週のお題「投げたいもの・打ちたいもの」

文豪気取り

吾輩は今月、弐本の大作を書いた。

自分の中を探る行為といふのは、大分疲れるものだ。

一つのおもひでを様々な角度から切り取ろうと色々考へる。ああでもない、こうでも無いと思案にふける事は楽しひ。

その反面、やはり読者様がゐると言うプレツシヤアも感じてゐる。

さらに今回のふたつに至つては、はてな様に選んでもらへるよう、考へに考へ抜いた物である。

ふたつともきつちり一週間づつかかつて書き上げる事に成功せしめたが、頭を大出力にて、回転させてゐるとどうしても、糖が足りなくなつてくる。

 

その様な時、吾輩は大好物の

 

ヨコレイ

 

を食す。

最近はもつぱら、傍らに

 

レイズン

 

を置いてゐる。

これが丁度いいのだ。

まず、チヨコレイトを一片頂戴する。

脳が、最初の甘さを感じるか感じないかの刹那、レイズンを弐、参個程口内に投じる。

すると、チヨコレイトとレイズン、甘さと酸っぱさのデツトヒイトが生まれる。

競走のやうでいて、ハアモニイのやうな。

どっちも負けるなと、吾輩は声援を投げかけ固唾を飲んで見守るのみ。

否。唾液の間違ひ。

そうこうしてゐる内、腹内へあつという間に消へていつてしまう。

 

嗚呼、旨し。

 

この行為を、弐、参回繰り返し、落ち着いた所でまた、思案に戻る。

 

用意するレイズンも、チヨコレイトもそんなに豪華な物で無くて良い。

どちらも、ラムウという、デイスカウントスウパアにて入手してゐる。

吾輩、域値を超へた高級な食べ物は、どうしても分からない事に気が付いた次第。

 

吾輩にとつての贅沢は、こんな事で良いのだ。

食べ過ぎと妻に怒られるが、ナントカ良い言い訳が無いかと考へてゐる。

 

すると、又欲してしまう。

 

甘ミヲ。

 

メビウスの輪のやうな、逃れられぬ運命に抗うこと等できようか。

 

今週のお題「あまい」

もしもの話

—もし〜だったら?

 

雑談等でよく出てくる質問。

私はこう言う類のものが苦手だ。

理由は、真面目に考えてしまうから。

 

「くそ」がつく程に。

 

文章に無い様々な条件を自分の中で勝手に考え、思考が止まらなくなって行く。

ありもしない話に振り回され、最後は、私も相手も疲れ果ててしまう。結局何も残らない。

 

「気軽に」

 

そんな事は言われずとも分かっているのだが、性分なのですいません。変えられない。

一時が万事こんな調子だから、私は人に好かれにくいのかもしれない。

 

なので、今回は人との会話では無く、自分で自分に質問してみた。

 

—もし、過去に戻れるとしたらいつがいい?

 

うん。私は、間違いなくこう答えるだろう。

 

「小学四年生」と。

 

勿論、外見は小4、10歳だ。

今現在の記憶を持って過去に戻る事とする。知能は、別にどっちでもいい。

 

あの時は本当に楽しかった。人生で一番と言っても過言では無い。

漫画によくある、新学期が始まっても進級しない設定。あんな風にずっと小4がループして欲しい位に。

クラスの皆で担任の先生の家に遊びに行ったり、放課後、友達と誘い合わせてザリガニ釣りをしたり、公園でエッチな本を見つけたりもした。

 

今日はクラスの皆全員と、話してみよう。なんて、今の私からは想像もつかない位、ポジティブな発想が出たりもしたなあ。

 

初恋も丁度この頃だ。

 

その子にちょっかいを出して追いかけ回され、この上なく嬉しかった。

 

そんな、数ある出来事の中、一番思い出に残っているのが、

 

「お楽しみ会」

 

クラスで色々な出し物をする。

クイズや、ジャンケンゲーム、そして、お芝居。

 

—豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ。

 

こんなセリフと共に、本物の豆腐をぶつけられた。劇が終わってからのアンコールを受け、2回程。

こんな楽しい記憶があったから、高校で演劇部に入ったのかもしれない。

 

そんなお楽しみ会の中でも、心に焼き付いているのがある。

それは、

 

紅白歌合戦

 

私がどうしてもやりたくて、実現させた。

その年の歌合戦。司会の加山雄三さんが、少年隊の仮面舞踏会という曲を

間違えて、

 

—少年隊で、仮面ライダー!!

 

と、コールした。

 

これがやりたいと、友達に歌ってもらう算段をした。勿論司会はワタクシ。

そして、大トリは、小林旭さんの

熱き心に

を熱唱し、フィナーレ。

 

終わった後、誰からとも無く、私にリクエストが来た。

 

友人に、やってもいいかなと、目配せをする。

 

コクリ。okだ。

 

披露するのは「小森のおばちゃま」のモノマネ。

私を人気者にしてくれたネタだ。

 

—価値を下げるな。

 

あの時、友達がマネージャーの如く、やっていい時を判断していた。

 

教室は大爆笑。

皆、最高に盛り上がって会は終了した。

正に人生のピーク。

 

 

…この事は墓場まで持っていこう。

 

 

と、思っていた。

 

ええい。思い切って言ってしまおう。

 

実はこのモノマネ。

 

私のオリジナルでは、

 

無い。

 

当時、とても仲の良い友達が居た。彼は言うなれば、

 

「ワードモンスター」

 

飼っていたハムスターの名前は、

「ネンブルリ」

朝の挨拶は、

「マヨネーズ、モーニング」

その他の多くは残念ながら忘れてしまったのだが、全く想像の及ばない場所から生まれる言葉達に、私は驚きと尊敬の念を抱いた。

 

そんな彼の「小森のおばちゃま

 

タレントで、映画評論家の小森和子さん。特徴のある喋り方で人気を博していた。片岡鶴太郎さん等が、モノマネをされていた記憶。

 

しかし、彼のそれは単なるコピーでは無かった。

 

—おばちゃまは、もう少し歌が上手かったらなぁ、っておもうのよ。

 

—おばばばば。

 

似ている訳では無い。

鼻声でこのセリフを言うだけ。

 

ただ、この最後。今流行りの勢いと誇張。そんなモノマネをその時彼は既に会得していたのだ。

 

私はこれを駆使して一躍スターダムにのし上がった。自分のネタとして。

 

—それ、俺の面白いやつや。

 

と、言われなかったのは何故か。

実は彼、小3になる前に、引っ越してしまったから。

 

その事をひた隠し、今まで生きてきた。

 

もし、その頃に戻れたら。

そのネタを、私は披露するだろうか。

いや、「彼の」と前もって言ってしまうか。

あるいは、彼にやっていいか、五駅程距離の離れた家まで聞きに行くか。

はたまた今から、彼にありがとうって言ってから過去に行くか。

 

ほらまた、そんな事まで考える。

だから、疲れんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別お題「今だから話せること

白昼夢

気がつくと私は、300人位が入りそうな芝居小屋にポツンと居た。

薄暗く、もう何年も使用されていない様な場所。

客席の中央辺りにスポットライトが当たっている。

その光が、幾粒ものキラキラ光る埃を映し出していた。

 

—ここに座れと言うのか。

 

不思議に思いながらも、照らされている席に私は座った。

 

暫くすると開演のブザーがなり、次第に辺りが暗くなり始める。

ゆっくりと緞帳が上がり、舞台にピンスポットライトの丸が現れた。

 

浮かび上がる

 

「グルグル」回っている

 

男の姿。

 

必死に、全力で回転している。

腕と足をばたつかせ、暴れる様に。

 

あれではそう長くはもつまいと思った。

 

やはり、息が次第に荒くなり、疲れ果てた男はとうとう倒れてしまった。

大の字になって激しく上下する上半身。

すると、すかさず何処からか、

 

—お前みたいなもんが。

 

と、馬鹿にした様な声がした。

 

すると、男は疲れきった身体を引きずる様に立ち上がり、引き攣った作り笑いをした。

 

そこで私は気付く。

 

…あれは、「私」だ。

 

そしてまた、「私」は回り出した。

汗なのか涙なのか分からない液体で、顔をぐしゃぐしゃにさせ、何とも形容しがたい唸り声をあげながら。

 

やがて、精も根も尽き果てた「私」は客席に背を向けて座り込んでしまった。

 

浴びせられ続ける嘲笑。

 

小刻みに震える背中。時折り自分の太腿を殴っては小さく、

 

畜生。

 

と呟いている。

 

一体、私は何を見せられているのだ。

席を立とうとした矢先、ピンスポットライトが少しずつ動き出した。

 

今度は楽しそうな不特定多数の子供達の声が辺りを包んでいた。

 

ライトは動き、机に突っ伏している男の子を照らし出した。

 

すぐに分かった。

 

…あれは、「ぼく」だ。

 

背の順番が前から2番目で、制服にまだ着られている頃の。

きっと、いじめにあった時期だろう。

 

いじめグループからの攻撃もさることながら、それ以上にキツかった記憶。

 

それは、仲の良いと

 

「思っていた」

 

友達の態度が変わった事。

 

所詮人間なんてこんなもの。

誰も、何も、信用できない。

そうだ、その頃から始めた高速回転。

 

「ぼく」を振り落としたのも気付かずに、軸の無い回転を続けていたのか。

 

「自分しか信じちゃいけない」

「全力で回転しなくちゃいけない」

 

吹けば飛ぶような薄っぺらの心と身体で、少しでも残像を残し、他人を威嚇してきた。

 

鍼灸師、ケアマネジャー、自動車教習指導員。

強くならねばと思い、必死になって取得した資格達。

 

だが、一つも強くなった気がしなかった。

滞りなく寿命を全うするだけが目的の、表面だけを取り繕う、存在意義など無い私と成り果てていたんだ。

 

そんなことを考えていると、舞台全体が次第に明るくなり「私」は、「ぼく」の存在に気がついた。

息を整え、ぐしゃぐしゃになった顔を手で乱暴に拭って「ぼく」の横に立つ。

 

そして「私」は「ぼく」の肩にそっと手を置く。

 

お互いの顔が合った所で、幕が降りた。

 

客席に明かりが灯る。

 

何か気配がして後ろを振り向くと、甥っ子の姿があった。

その横には、ピンスポットライト。

優しい笑顔を湛えながらこちらを見ていた。

 

—あんたらめっちゃそっくりやな。

 

その言葉で我に帰る私。

 

そうだった。

 

今は、姉家族に会っている最中。

 

—おんなじ緑の服着てさ。ちょっと横に並んでよ。写真撮るから。

 

そうか。

 

とても素直に自分を表現する彼に、私は置いてきた

 

「ぼく」

 

を思い出したのだ。

 

—はいチーズ。

—ほんまそっくりやわ。血は争えんなあ。

 

姉は笑っていた。

私も甥っ子も笑った。

 

それから私は、すぐにブログを始めた。

導かれる様に、テーマは、

 

「ノスタルジー

 

「私」と「ぼく」がひとつだった頃を、しみじみ思い出しながら、久しぶりの再会を楽しんでいる。

 

そして決めたんだ。

 

私は、

 

もう、

 

回らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結実

—いい所に連れて行ってやる。

 

私が小学校の中学年くらいの頃、兄から言われた言葉だ。

 

どこに連れて行かれるのだろう。

私は不安に駆られた。

 

兄は、危ない遊びに度々私を同行させた。

野犬が出るスポットに行こうとか、長い用水路のトンネルをくぐって、川に出る等。

 

今回も、どんな目に遭わされるのか。

気後れしながらも、兄と兄の友達の後をついて行く。

 

着いた場所は、我々が通う小学校だった。

 

良かった。

学校ならば、そこまでの危険はなかろう。

 

その日は休日で正門は勿論閉まっていた。

だが、裏門というのか、裏口は、そもそも扉が無かった。

そこから3人、コソコソ入って行く。

 

そこから最寄りの校舎の入り口付近で、二人の足が止まった。

 

—ここだ。

 

兄は、校舎の側にある、崖の上を指差した。

見上げると、ブロック塀が連なり、頂上には緑色のフェンスが立ちはだかる難所だ。

 

私以外の二人は、難なくスイスイ登りヒョイとフェンスを跨ぐ。

 

—早くこいよ。

 

分かっている。どうにかこうにか登りきり藪の中の声について行った先には、

 

赤い色。

 

なんと、それは

 

野いちご

 

だった。

既に二人は夢中になって食べている。

 

どれ、私も一つ。

 

この時、野いちご初体験。

小さな粒で構成されている普通のとはまた違ったいちご。

 

とても、みずみずしく甘酸っぱくて、

 

美味しかった。

 

時折り兄達は、

 

—これは、どうやろ?

 

—覇王やん。

 

等と、粒の大きな物に名前を付けていた。

私も覇王を見つけて食べた。

大粒のものはやはり甘みが強く、一段と美味しかった。

 

あの時の感動。

もう一回味わいたいと、フリマサイトで見つけた株。

 

どうか実をつけてくれないかな。

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